2009年11月9日月曜日

経営者になる。経営者を育てる。

先日は経営学者が書いた「よき経営者の姿」の読書ノートを作成したが、今日は、BCGのコンサルタントが書いた「経営者になる。経営者を育てる。」について読書ノートを作る。どちらの本もかなり以前に読んだが、その当時は経営の実際の現場から遠かったので、知識としてのみ理解したに過ぎなかった。現在は少し、自分の経験に基づき物事を考えられるようにはなった。
この本では、あるべき経営者として出井さん、稲盛さん、金川さん、酒井さん、鈴木さん、高原さん、柳井さんを上げている。「よき経営者の姿」は、小倉さんがメインなので、あるべき姿として想定している経営者は世代的に異なっている。結論的には、求められるスキルとしては同じような感じだが、これは上記の経営者の言葉を多く引用し、それらの共通項を出す帰納法的アプローチだが、「よき経営者の姿」は、経営とは何から必要な姿(スキルにかかわらない)を導出する演繹型アプローチとも言える。




1. 経営者に必要なスキルセット
(1) 経営者が実行すべきこと。
  特別変わった内容ではないが、経営者は以下のことを実行する必
  要があると説く。
  ① 自社の置かれている市場環境を正しく認識する。
  ② 目標を決める。
  ③ 目標と現状のギャップを正確に認識する。
  ④ ギャップを埋めて、目標を達成するための戦略・実行プランを
    立案する。
  ⑤ 社員に対して、目標、戦略・実行プラン、なぜそれをやり遂げな
    ければならないかを正しく伝え、目標に向けて動機付けする。
  ⑥ 組織として、戦略・実行プランを実行する。
  ⑦ プランの進捗状況・結果をモニターする。
  ⑧ 結果を解析し、必要に応じて軌道修正する。

  経営のスキルを、科学系のスキルとアート系のスキルに分類し述べ
  るが、特にアート系のスキルが重要と説いている。

(2) 科学系スキル
  ① マネジメント知識(戦略、マーケッティング、経済学、会計、オペ
    レーション等)
  ② 論理的思考(論理的に個別要素に分解、要素間の関係を理解、
    定量的に理解、個別要素を積み上げて統合する力)

(3) アート系スキル
  ① 強烈な意志
    ・ 事業において何が何でも結果を出すという意志が必須。この
     源泉は「高志」と「責任感」
  ② 勇気
    ・ トレードオフを理解したうえで、どちらかを捨てる勇気。
    ・ 不完全な情報下でも必要なタイミングで決断する勇気。
    ・ やめる勇気。変える勇気。
    ・ 必要ならば情を捨てて人を切る勇気。
     そのためには、リスクを管理できること、無私な倫理観を持っ
     ていることが必要。
  ③ インサイト
    ・ 洞察力、発想、ひらめきであり、事業の本質を見抜いたり、
     経営課題を見る視点を大きく変化させ、競合他社が思いつか
     ない新たな戦略を構築する。
     日ごろから、以下のクセをつけておく必要がある。
      ◆ 一歩引いて本質を見る。
      ◆ 二極性で発想する。
      ◆ 自分が「何にハマッているか」を客観視した上で、あえて
        自分のハマッている思考パターンの反対側/外側に振
        ってみる。
      ◆ 定石は必ず壊して進化させる。
      ◆ 他人の頭を使う。
  ④ しつこさ
    ・ 「考えるしつこさ」と「実行するしつこさ」が必要。斬新な発想は、
     どれだけ「しつこく考えるか」の関数。
    ・ 実行するしつこさで事業の成否に差がつく。
     地味に、地道に実行する。派手で奇抜なプランは短期的成功
     を生むかもしれないが、長期的には持続性はない。長く継続
     する。10年かけて構築した優位性は、競合他社が追いつくた
     めには10年以上かかるほどの確固たるものとなる。
  ⑤ ソフトな統率力
    ・ 強制的に指揮命令するのではなく、経営者の掲げる「夢」の魅
     力の強さ、人間的魅力で構成員を魅了し、組織として結果が出
     せるように仕向ける力。
     ◆「夢」を掲げる能力:「志」の高さと「清さ」
     ◆「夢」を共有する能力:受け手が共感する。やわらかな人的
       ネットワーク
     ◆経営者の人間的魅力:「志」の高さ、ひたむきな徹底、
                     ねあか

(4) スキル習得
  ① 特定のスキルを習得したいという強い意志を持ち、目標を定める。
  ② 集中する。一時期に一つのスキル習得に専念する。
  ③ スキル習得の訓練法を編み出す。
  ④ スキル取得のアクションを愚直に、何回もしつこく繰り返し実行する。
  ⑤ 習得状況を書き留めてモニターする。
  ⑥ スキルを習慣化させる。

(5)実体験でのポイント
   ①若いころ
   ②事業を構成する一機能ではなく、全体を統括する体験をすること。
   ③修羅場や背水の陣の状況を体験すること。
   ④失敗しても立ち直れることができるようにダウンサイドリスクを小さくしておく。

(6) 企業の成長とそれに対応するアプローチ
   ① 企業の成長
    ・ 創造ステージ
    ・ 成長ステージ
    ・ 優位性ステージ
    ・ 効率ステージ
   ② アプローチ
    ・ 戦略型アプローチ:長期的、包括的な戦略の立案・検証・実行が
     必要なとき。
     ⇒CEOが前面に出て実行。80%の時間をかける。
    ・ 人材型アプローチ:顧客に近い事業部に任せたほうがよいとき。
     ⇒CEOは幹部人材の育成や配置に注力。幹部での価値観共有。
    ・ 競合優位型アプローチ:自社の趨勢がある特定の競合優位性に
     大きく依存するとき。
     ⇒CEOはたとえばR&D、営業等重点領域に注力。
    ・ フレーム型アプローチ:製品・サービスを安定して高品質で提供す
     ることが重要な場合。
     ⇒CEOはフレームつくりとモニタリング異常値対応。
    ・ 変革型アプローチ:今までのやりかたと決別し、大きく変革しなけ
     ればならないとき。
     ⇒CEOは従業員に必要性を認識させるために、スピーチ、ミーテ
       ィング等のコミュニケ-ションに注力すべき。

経営の魂のようなものは感じられないが、体系的によくまとまっている。
このノートには、書いていないが、各経営者の「生の言葉」をうまく編集し、
使っており、読み物として読みやすい。しかし出井さんを名経営者とみるかどうか等評価がまだ定まっていない経営者も登場している。

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