2010年10月24日日曜日

経営は実行。(EXECUTION)

英語版『EXECUTION』を、以前に購入し読み始めたが、ボシディとチャランの
コメントが入ってきてそのニュアンスがよく分からないので、興味を失くして積読
となっていた。
久しぶりに本屋でこの本を見つけ、2010年に改定版が出版されたとのことで今度
は日本語版を買って読んでみた。
経営者の立場で戦略を実行する、させるにはどうすればよいかについて的確に
書かれている。
 理論書ではないので、経営に近い経験がないとこの本の本当のところは理解
出来ないかも知れない。以前の自分も英語版ということだけでなく、経営に対する
経験不足ということもあるかもしれない。
以下ポイントを書き留めておく。


成功する企業と低迷あるいは破綻する企業を分けるのは、戦略や目標を実行
する体系である。人材、戦略、業務という3つのプロセスが、優れた実行の核で
あることには変わりない。
今回の改訂版ではそれぞれに以下の改訂が必要であると説く。

1. 戦略プロセス
 業界の競争分析だけを基に戦略を立てていては不充分である。環境変化が
 激しいので、世界の金融・経済環境を分析し、理解しておくことが必須である。
 成長率が鈍化し、競争が激化し、消費行動が変わり、政府の規制が強化され
 るといったことを考慮する必要がある。
2.人材プロセス
 高成長環境では数多くの罪を覆い隠すことができるが、低成長時代になると、
 事業に携わる人々すべて、特にリーダの欠点がことごとく明るみに出てくる。
 厳しい環境の中で、実行力を発揮でくるだけの鋭さと不屈の精神、粘り強さを
 持ち合わせた地力のあるリーダが必要となる。
3.業務プロセス
 優れた実行の体系には、説明責任と明確な目標、パフォーマンスを測る精緻な
 手法、そして成果をあげた者への正当な報酬が必要である。だが現在、リーダ
 にはこれまで以上に柔軟な業務計画をたてることが求められている。
 戦略は一度立てたら、絶対に変えてはならないものではなくなった。
 事業環境の変化に応じて絶えず見直し、修正を加えていくのが優れた戦略だ。
 在庫の調整であれ、価格の見直しであれ、広告やマーケッテイングの見直しで
 あれ、年に何度も変更が必要になる。迅速に資源を再配置することによって、
 業務計画がこの変更に適応できるようにしておかなければならない。
 リーダは変化のための変化を追い求めるのではなく、変化が必要な状況になっ
  たとき、自分自身だけでなく社員全員が素早く変われる準備をしておくべきだ。
4.リーダがとるべき7つの基本行動
(1)人を知り、仕事を知る。
 現実がよく見えていて、障害をものともせず、どんな困難があっても戦略を実行
 する気概を持っているのが誰か分かるようにする。そして組織として嵐を切り抜
    け、好機に備えるために必要な抜本的な変革をできる能力があるかどうかも
 見極められるようになる。
 リーダとして試練のときに何より大切なのは、話しやすいリーダであること、若
 干の懸念はあるものの自信があるとの見方を示すこと、できるだけ率直でふる
 いにかけていない情報を提供すること、そして毅然とした行動をとることである。
(2)現場主義を徹底すること。
 問題を覆い隠そうとするのではなく、あくまで現実的であろうとすべきである。
 ただし不確実性とともに生きるとは、身を縮めていることではない。
 状況の変化に応じて戦略も変わると自覚した上で、戦略に基づいた行動をとる
 べきだ。実際に市場で消費者の行動を観察するなど、「現場」に出て実地に情
 報を集めることだ。
(3)明確な目標と優先順位を見極める。
 世界が様変わりしたことで、明確な目標と優先順位を見極める能力が試されて
 いる。現実をよく見ること、業務と人材を知ることが、まず必要である。目標選択
 を誤れば悲惨な結果になりかねない。
 社員の能力を現実的に評価できないために目標選択を誤る場合が多すぎる。
 適切な目標を打ち出すことは第一歩であり、目標が決まれば組織全体で実行
 に移る。優先順位を決め、ベンチマークを行う。
(4)フォロースルー
 誰が何に責任を持つのかを決め、成果の進捗度合いを測る具体的な目安を決
 めて、会話を終える。こうした仕上げをしなければ、決定や戦略を実行すべき
 人間が自分の役割を明確化できない。先行きが見えにくく、世の中がめまぐる
 しく移り変わる中で、フォロースルーはこれまでよりもはるかに厳しいプロセス
 となっている。
 遅れが出ないようにこまめにチエックする必要があるし、全員が戦略の進捗を
 把握できるように、より詳細な情報を素早く流さなければならない。
(5)成果を上げたものに報いる。
 「成果」をあげるということを正確に定義しなければならない。成果をあげた者
 とは物事をやりとげた者である。成果を上げるとは、目標を達成することである。
 今までは短期的な成果を過大視しすぎる傾向があり、間違った行動を帰結した。
 中長期的視点が重要。
(6)社員の能力を伸ばす。
 やる気や勇気、正直さ、高潔さ、忍耐力など、混乱した状況でモノをいう資質
 をもつ人材を探し、育てるべきである。悪い状況もいい方向に変えていける人間
 が必要。
(7)己を知る。
 人は頂点にたったとき、成長するか慢心するかどちらかだ。自分の盲点や弱点
 を克服するには、社内外の知恵を集めるとともに、幅広い見方を教え、悪いニュ
 ースも進んで知らせてくれる人たちとのパイプが必要だ。
 何より肝要なのは、自分が問題の一部だと気づけるようにしておくことだ。
(8)最後に
 第一に、自分を取り巻く世界について圧倒的な知識を持っている。
 第二に、学ぶことをやめない。
 第三に、驚くほどの柔軟性があり、状況が変化すれば素早く適応する。
 何よりも大切なのは、自分についてくる者たちが元気になれるように前向きに
 指導し、自信を与える資質である。
5.実行
 ・実行とは体系的なプロセスであり、戦略に不可欠である。
 ・ 実行とはリーダの仕事である。
 ・ 実行は、企業文化の中核であるべきである。
(1) 実行とは、何をどうすべきか厳密に議論し、質問し、絶えずフォローし、責任を
  求める体系的なプロセスだ。
  経営環境を想定し、自社の能力を評価し、戦略を業務や、戦略を実行する人事
  と結びつけ、さまざまな職種の人々が協調できるようにし、報酬と成果と関連つ
  けることである。
(2) リーダが組織にどっぷり浸ってこそ、その組織は実行力を発揮できる。  
(3) 事業に深く関与するリーダだけが、十分な知識をもって全体を見通し、決定的
  な質問ができる。
(4) 優れた実行力を持つリーダは、いかに実行の中身に関与し、重要なときに細か
  い点にまでかかわっているかが分かるはずだ。
(5) 実行力のある経営者は、業務計画の検討段階で、目標が現実的であるかどう
  か知ろうとする。
(6) 戦略計画を策定する際に、結果に責任を負う関係者全員を巻き込む。
(7) どうやって実行できるを明確化する。
(8) 担当者に厳密な責任を求め、中間目標を作って計画の進捗状況を把握する。
(9) 予想外の事態、外部環境の変化に対処するための不測事態対応計画を策定
  する。
(10) 自分に忠実だと信頼できる人間で周りを固め、新しいアイデアで自分を脅かし
   そうな人間を排除するものだ。こうした精神的な弱さがリーダ自信を、そして
   企業を破滅させる。
(11) 利己心を絶えず抑制し、行動に責任を持ち、変化に適応し、新たなアイデアを
   取り入れ、どんな状況においても高潔さと正直さという己の基準を守る。
(12) 公式・非公式の会議、評価制度、報酬制度等の社会的ソフトが企業の文化を
   決定する。企業の上級幹部が集まるレビュー会議は重要である。
(13) 活発な対話つまりオープンで率直でざっくばらんま議論によって現実を浮き
   彫りにしなければ、実行の文化は生まれない。
(14) 求めているのは、勝ちにこだわる人間だ。勝ちにこだわる人間は、物事を成し
  遂げることから満足感を得る。成し遂げたことが多くなるほど能力は高まる。
(15) 目標達成の方法も重視すべきだ。組織や部下の能力を強化する形で達成し
  たのか、それとも弱体化させる形で達成したのかは重要。
6.人材プロセス
 (1)各人を正確に深く評価する。
 (2)幹部となる人材を見極め、育成する枠組みを作る。
 (3)強力な後継計画の基礎となるリーダシップ・パイプラインを確保する。
  過去に目を向け、現在のポストでの仕事を評価するのではなく、明日の仕事
  ができるかどうかが重要。
  コンピテンシーを整理し、その言葉で客観的に評価すべき。すべてがよいと
  いう人材などいない。
 業務スキル、ビジネススキル、マネジメントスキル、リーダシップスキル。
7.戦略プロセス
 (1)事業環境(市場成長、市場シエア)(既存のお客や市場の理解。購入の意思
  決定者はだれか?)
 (2)競争相手(強み、弱み)
 (3)ある事業で一部の企業の成功が目立っているのはなぜか。 
 (4)自社に戦略を実行できる能力があるか。
 中間目標が必須。
 戦略検討の中で、事業チーム全体が、新製品を自分達のものだと考えるように
 する仕組みが必要。
 戦略レビューをどう進めるか。
 戦略レビューで取り上げるべき質問
 ① 競争相手についてどの程度知っているか。
 ② 組織の戦略実行能力はどの程度強いか。
 ③ 戦略計画の焦点がぼやけていないか。
 ④ 適切な戦略計画を選んでいるか。
 ⑤ 人材と業務の関係は明確になっているか。
戦略レビューについて評価と宿題を出す。
8.業務プロセス
 戦略と人材プロセスを連動させる。
 業務計画とは、すべてに責任を負うものだ。
 人材、戦略、業務を結びつけ、1年間の目標を明らかにし、課題に落とし込む。
 業務計画は、現実的な想定に基づき、目標を達成する方法に基づいて立て
 られていることが必要。
 業務レビューは、最高のコーチングの場である。重要性の高いものはどれか。
 相互の関係はどうなっているか。
 好結果を出すのに何よりも重要なのは、三つのコア・プロセスを自らが主導す
 ることだ。これらはビジネスの核心であり、文化を変革したり強化したりする際
 のテコになるものだ。
 
実行力のある企業とそうでない企業の最大に、そして唯一の違いは、
リーダがこれらのプロセスを厳格に、精力的に追求しているかどうかだ。