『経営線戦略の論理』伊丹敬之を読む。
読んだときは、経営を静的に捕らえず動的に捕らえる視点
に大変感動したが、読書ノートにまとめてみれば、きわめて
基本的なことを述べているのに気づく。
事例が、プレジデントや日経ビジネスからの引用であること
より、なぜか迫力に欠ける。
ポイントは以下のとおり。
経営戦略の中核的な枠組みは以下のとおりと述べている。
以下が定義されていないのは、経営戦略といわないのかも
知れない。
①製品・市場ポートフォーリオ:「何をだれに売るのか。」
②業務活動分野:「売るために、自分はどんな仕事をするのか。」
③経営資源ポートフォーリオ:「その仕事のために、どんな能力と特性をもつか。」
経営戦略には、それぞれと適合していることが必要である。
市場競争に勝ち、顧客の需要を自社に獲得するために、企業は顧客に対して供給をきちんとするためのビジネスシステム(開発から生産・販売までの体制)を作る。あるいは、そのビジネスシステムをきちんと動かすための技術を蓄積・開発している。つまりビジネスシステムと技術は、企業が内部の資源と組織を使って働きかけるインタフェースの役割を果たしている。
(1)市場との適合:①顧客適合、②競争適合
市場の状況に適合したような戦略の内容になっているか、という判断
基準。
(2)インタフェース適合:③ビジネスシステム適合、④技術適合
戦略がビジネスシステムや技術を適切に使っているのか、という判断
基準。
(3)内部適合:⑤資源適合、⑥組織適合
企業内部状況に適合したような戦略のないようになっているか、という
判断基準。
「適合」の三つのレベル
・第一レベル:適合すべき相手方の現状や障壁を所与として、それに合
わせる適合。
⇒受動的適合
・第二レベル:その要因の自律的な変化へ対応していき、さらには能動
的に望ましい方向へ変化させていく、あるいは障壁を克服して行く戦略
を持つという意味での適合。
⇒能動的適合
・第三レベル:その要因の本質や変化を逆手にとってテコとして利用する
戦略を持つレベル。きわめて効率的に成果を上げられるテコの作用を
使った適合。
⇒テコ的適合
戦略の顧客適合1
顧客のニーズは束であるが、束の全体をどう攻めるか。
①訴求ポイントの核を明確化する。
②ニーズの束全体へのバランスの取れた目配りをする。
③ニーズへのネックに適切な手を打つ。
戦略の顧客適合2
①ユニークな細分化を考える。
②ターゲットを絞る。
③細分化のデメリットへの解決策を用意する。
ニーズは変化していく
顧客を、収益性のお客、成長性のお客、見えざる資産のお客に分類し、ポートフォリオ管理
競争適合1
①競走上の優位性を作る出す。
②相手の反撃への対抗策をもつ。
③競争相手を実際の敵にしない。
競争相手
・同一製品の生産者
・直接的な機能上の代替製品の生産者
・購入者の購入目的の同一な、しかし全く異なった製品の生産者
差別化
①製品差別化
②価格差別化
③サービス差別化
④ブランド差別化
戦略のビジネスシステム適合
ビジネスシステムでもっとも重要な決定は、以下であり、第一レベル:有効性、第二レベル:効率性
第三レベル:将来への波及効果(能力蓄積、企業ブランドの形成)により決定する。
・自分で行う仕事(業務活動)は」何とするか。
・他の企業に任せる仕事をどうコントロールするか。
戦略の技術適合
技術の実体は、知識であり、ノウハウである。何かをこうすればできるという知識である。
技術とは、具体的な企業活動の実行のための知識基盤である。
①戦略が技術蓄積を効果的に利用する。ある既存の技術蓄積を所与として、戦略が活用。
②戦略が効率的に技術を育てる。戦略が示す企業活動の方向性が技術を育む。
③技術が戦略を有効にドライブする。ある技術への「現在」のコミットメントが、その企業の「将来」
に向けての戦略構想を組織全体で創発させる。
既存製品をベースに、材料技術と設計技術を進化させて、汎用性のある次世代製品へ横展開する
考えがなければ、技術の核にこだわるという戦略は、さらなる発展への戦略としては不十分である。
見えざる資産
企業の内部条件として戦略との関連で重要なのは、企業の持つ経営資源と企業に働く人々の人間集団という二つの要因である。
見えざる資産はなぜ重要か
・競争優位の源泉として
・変化対応力の源泉として
・事業活動が生み出すものとして
つまり見えざる資産は、それが現在の事業活動を成功させるために必要であるために、現時点での利用をうまく考えることの重要性と、将来のための蓄積がその事業活動から生まれてくるという重要性と、二つある。
見えざる資産の性質
・カネを出しても買えないことが多い。
・作るのに時間がかかる。
・複数の製品や分野で同時多重利用ができる。
見えざる資産の蓄積の鍵は、いかに情報の流れを自社がコントロールするかである。
ほしい情報が豊かに流れるのはどこかの見極め
そこをどのように自らのコントロールに置くか
戦略の資源適合
戦略の内容は、企業も持つ資源に合ったものでなければ、有効な成果は生み出せない。
戦略の資源適合の三つのレベル。
①戦略が資源を有効利用する。
②戦略が資源を効率的に蓄積させる。
③戦略と資源の不均衡ダイナミズムを生み出す。
資源を超えた戦略を策定し、その不足という不均衡がバネとなって、ダイナミズムが生み出される。
不均衡が新たな資源蓄積のバネとなる。
効率的な資源蓄積のためにはドメインを設定する必要がある。
ドメイン設定によって、人々の「自発的な」蓄積活動を活発にする。
効率的な資源蓄積を考える戦略は、必然的に現在の戦略と将来の戦略(新しい蓄積をさらに
利用する戦略)をセットで考えたものになる。
資源を生み出す戦略とその資源を使う戦略との組み合わせの妙を考える。
ダイナミックシナジーとは、現在の戦略から生み出される資産を将来の戦略が使うという効果である。見えざる資産は、情報的資源であるからこそ、現在の戦略も使い、将来の戦略も同時に使うこができる。このダイナミックシナジーこそが、企業成長のエッセンスである。
なぜならば、絶えず変化していく企業環境へ企業が能動的に適応していくための能力の源泉が、事業活動が生み出す見えざる資産にあるからである。その資産を効率的に蓄積し、ダイナミックに有効活用していくダイナミックシナジーは、企業の環境適応力の核となる。ダイナミックシナジーのある二つの事業分野の間ではライフサイクルの違いによってキャッシュフローのパターンがうまく違っていることがよくあるからである。
基本戦略を策定する場合、製品・市場分野の選択だけに偏らず、資源蓄積への波及効果の業務分野戦略や実行戦略を考える必要がある。
戦略の組織適合
戦略は組織のためにある。戦略の成果としての企業の業績は、組織に働く人たちの小さな努力や
活動の積み重ねとしてのみ生まれてくる。戦略の内容は、日常の活動をする人々の心情や利害、
人間的な強さや弱さをよく考えた上で彼らを動かせるように練り上げられなければならない。
実行する人々に浸透し、本当に自らの活動の指針となれなければだめである。
組織適合の3つのレベル
①一本化の焦点:組織の人々の意識と努力の方向を一本化させるのに有効か。
②組織の勢い:人々が「積極的」に努力するような状態か。
③創造的緊張:組織の人々に創造的な緊張感を作り出すことに成功しているかどうか。
「ほどほどの戦略を全員でキチンと徹底して実行している方が、すばらしい戦略を中途半端に
実行するより、よほど成果が大きい。」
いい戦略が満たしている7つのキーワード
①差別化
②集中
③タイミング
④波及効果
⑤組織の勢い
⑥アンバランス
⑦組み合わせの妙
戦略的発想のためのものの見方
①日常的情報に宝がある。
②動的に見る。相対的に見る。
③常識のすぐ横を見る。
戦略とは
「企業や事業の将来のあるべき姿とそこに至るまでの変革のシナリオ」
3つのべからず
「スローガンと掛け声だけで戦略になると思うべからず」
「戦略の作成を現場、特に最前線に任せべからず」
「変革への第一歩の踏み出しを、成り行き任せにするべからず」
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