2009年11月14日土曜日

図解で磨くプロマネ技術(実践マニュアル)

システム構築の成否は、プロジェクトマネジメントにかかっていると言っても過言でない。
プロジェクトマネジメントのノウハウは、現場の経験・ノウハウがベースであり、かっこよい理論とはほど遠い。この現場のノウハウを読み物としてまとめた書籍が「図解で磨くプロマネ技術(実践マニュアル)」である。著者は、住友生命の情報システム子会社で、システム構築に長年携わってこられたベテランである。
プロマネ技術を、1.プロジェクト計画(成否を決める計画立案)、2.プロジェクト遂行(危機を防ぐプロジェクト遂行)、3.評価、報告、フィードバック、4.フェース別開発ドキュメントに分けて、具体的ドキュメントを活用しながら、改善点を示している。
経験に裏打ちされ、心構え論に終わらない実践的なITプロジェクトマネジメント本である。



具体的には、以下の内容となっている。
1.プロジェクト計画
 プロジェクト計画は、成否を分ける重要なものでありスタート時点で以下に注意せよと説く。
 ①キックオフでは、利用者も参加し、思いを語るべし。
   なぜならば、
   ・プロジェクトの目標、制約事項、意思決定の方法
   ・課題の優先順位の決定、要件確認、仕様の確定、納期調整、
    稼動可否判断
   は、利用者の決定事項である。利用者の参画・責任感がプロ
   ジェクトの成否を決める。
 ②マスタースケジュールには、フェーズ、アクティビテイ、成果物の
   完成時期や納期だけでなく、プロセスを管理する方法、品質管
   理、資源管理、コミュニケーション計画も書くべき。
   ・プロジェクトは、単線的に進行するのではなく、どのように品質
    目標を定め、どのようなテストやレビューによって品質を確保
    するか、コミュニケーションの食い違いをどうやって食い止め
    るか、手戻りや仕様の膨張をどう防止するか。がポイントで
    あり、それらを入れた立体的計画にする必要がある。
 ③作り手だけでの計画ではなく、レビュー、レビュー後の修正、再
   レビューも入れる。
 ④コミュニケーション計画でも進捗会議を意味のあるものにしよう
  とすると事前準備、会議後のフォローが必要。
 ⑤リスク管理で既におきてしまったこと(発現)は課題であって、
   リスクではない。
   ・リスク管理表には「発現可能性」(確率)、「発現した場合の
    インパクト」(影響度、重要度)を書いてプライオリティ付けす
    べし。定期的にトラッキングを行っていくことが不可欠。
 ⑥体制図では実質的なメンバーが必要、役割定義表には部門間
   調整、要件・優先順位の決定、品質コスト納期についての判断
   等を忘れずに書く。会議体一覧では下位の会議から上位の会
   議に課題をエスカレーションしやすいようにする。

2.プロジェクト遂行
  プロジェクトが実際にスタートすると、以下のことに注意すべし説く。
 ①課題管理表では、責任者を明確にし、解決期限も入れる。
 ②変更管理理表には、影響や優先度、代替策、コストを記載し、
  権限者が判断を下す。
    ・インパクト分析→対応分析→可否判断
 ③問題管理表で仕様ミス、コーデイングミスを管理。
    ・解決へのアクション→横展開と再発防止→確実に対応
 ④定例会議のアジエンダとしては、前回の議事録確認、今回
   の結論、課題解決期限、担当者の確認、次回の日程、
   テーマ確認が不可欠である。
 ⑤作業環境を軽視するとメンバーの信頼が得られないので、
   作業環境をきちっと準備する。
3.評価、報告、フィードバック
  プロジェクトが進捗しているときに評価、報告等のマネジメント
  として以下の心得を説いている。
 ①中日程表、進捗管理表において、管理する作業のメッシュを
  統一する。
  ブレイクダウンする作業期間の粒度は「管理サイクルの半分
  以下」。月次管理なら管理するアクティビィティは2週間以内。
 ②スケジュールには、成果物の顧客承認や検収、受発注の契
   約手続き、フェーズイン、フェーズアウトの判定、成果物の
   品質評価や次工程計画の策定、見直し、要員のアサインと
   リリース 、作業場所や開発リソースの準備を考慮する必要
   ある。開発だけでなく関連するイベントを考慮する必要性を
   説く。
 ③品質評価報告書はケースの充足性や不具合の検出状況を
  客観的に評価するものであり、「問題なし」の結論を無理に作
  ることではない。統計は対策につながることを目的に取得する。
 ④リカバリー計画書は、内部で現状把握して方針を検討するた
  めの初動版、顧客と合意するための合意版、計画を実行する
  ための実行版を必要に応じて作成すべし。
  リカバリー計画は変更できないので、妥当性検証と綿密なモニ
  タリングが必要。

4.フェーズ別開発ドキュメント
 ①提案時のプレ要件定義にも注意し、付帯条件を明確にしておく
  こと。この場合は、対象外であることを明記したほうがよい。
  ・「移行データの作成および移行、移行後の検証については
   対象外とします。」等
  ・スケジュールやシステム化範囲について要件定義後に見直
   すことも合意しておく。
   現行システムの機能を踏襲する場合、注意が必要。
  ②要件定義では、相手の説明を無条件で信頼せず、矛盾をついて
   現状をあぶリ出すことが必要。
   例外や数字(データ量、業務量、作業回数、頻度)を把握。
   重要度、代替案、対応コストを作り「要望を絞る仕掛け」を分析表
   に埋め込む。
 ③設計書の記述は、作り手の視点になりがち。既存システムのコード
  設計も無条件の流用は危険。
   「ユーザビュー・外部設計のこつ」を参考に。
  機能ばかりではなく、性能、バックアップや障害時の対応も設計対象
  にする。
  コード内に事業部、部、課、係などの意味を持ち込まないようにする。
  持ち込むとソートや条件判定が複雑になる。
 ④要件定義の段階から移行方針を検討する。現行データを過信せず、
  移行結果の検証、現行データ整備、一部を手作業で移行等につい
  て計画を立てておくべき。

以上箇条書き的に書いたところもあるが、システム構築プロジェクトの
マネジメントのノウハウとして、大変よくまとまっている。

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