2009年11月14日土曜日

THE FIRST 90DAYS(最初の90日で成果を出す技術) by Michael Watkins

 新しいポジションに任命されたとき、最初の90日間で何をすればそのポジションで成功をおさめることができるかについて、具体的に書いた書籍。
 今年から新たにI経営に携ることとなった自分にとっては活動計画を策定したり、進捗状況を判断したりするときの参考書であった。
 着任してから数ヶ月は、まさに無防備であり、直面する課題に立ち向かう準備がまったくできておらず、どうすればうまく乗り越えられるかも分からない。さらに親身にアドバイスしてくれる人脈もない。
 この時期に、部下からやる気を引き出し、目標に向かう士気を高められないとその後の在任期間中ずっと苦労することとなる。信頼を勝ち取り何らかの成果をあげておくことは長期的成功につながる第一歩だとは分かっている。しかし、それなら何をすればよいのかについては体系的に分からない。体系的かつ具体的に教えてくれるのがこの書籍である。




まずは、以下のステップで取り組んでいくことを説く。
1.スイッチを切り替える。
2.謙虚に効率よく学習する。
3.状況を診断し戦略をたてる。
4.緒戦で勝利を目指す。
5.上司といい関係を築く。
6.組織をデザインする。
7.人事を固める。
8.ネットワークを作る。
9.上手にバランスをとる。
10.全社的なサポート体制を整える。

各ステップでの具体的実施内容や留意点を以下に示している。
具体的で大変分かりやすい。
1.スイッチを切り替える。
 -前の仕事を意識的に切り捨て、新しい仕事に没頭する-
 新旧の違いをはっきりわきまえ、考え方や行動の仕方をどう切り替え
 たらいいか考えておく。
 ・新しい職場で成功するために欠かせない要素は何か、
 ・関心や意欲がなかったものはどれか。どうして克服するか。 
2.謙虚に効率よく学習する。
 -会社(部署)の状況を、的確に把握する-
 まず以下の内容について、「学習計画、質問集を作成する。
 ・過去(業績、原因、改革)
 ・現在(ビジョン戦略、人材、プロセス潜在的な問題、緒戦の勝利)
 ・未来(課題と機会、阻害要因と経営資源、文化)
各部門、各階層、顧客、販売店、サプライヤー、アナリストへヒアリング
をし、
 情報収集→分析→重要情報の抽出→仮説構築→仮説の検証
 →理解の進化を図る。
 同時に、組織文化(権力の所在と価値観)(正規の権限をもって決定
 を下すのは誰で、陰の実力者はだれか、ほめられるのはどんな行動
  で、非難されるのはどんな行動か。を把握するように努める。
3.状況を診断し戦略をたてる
  各事業や部門の状況を以下の分類で判断していく。
  ①離陸:人ものかねを結集し、新事業、新製品をうまくスタートさせる。
   →アプローチ(攻め×行動)
    適切な人員でチームを編成し、戦略を絞り込む。手を出すべきで
    ないことを決め、横道にそれないようにする。
  ②方向転換:不振に陥った事業やトラブルに見舞われたチームを立
   ち直らせ、正しい方向に進ませる
   →アプローチ(守り×行動)
    死守すべきコア事業や製品を見極める。枝葉を切り落として身軽
    に前進する体制を整える。
  ③針路修正:停滞の兆しが見えてきた事業やプロジェクトに再び活を
   いれ、トラブルが予想される製品やプロセスを手直しする。
   →アプローチ(攻め×学習)
    改革の必要性を気付かせ思い腰を上げさせる。
  ④高度維持:好業績をあげている事業のペースを保ち、さらに発展さ
   せる。
   →アプローチ(守り×学習)
    成功や業績の主要因を知り、それに対する理解を示す。

4.緒戦で勝利を目指す。
 成功をおさめるためには、緒戦で勝利を目指し、これを横展開する。
 以下の陥りやすい罠を避ける。
  ・ 的を絞りきれない。
   ⇒有望なフィールドを見極め、そこで得点を上げるべく全力を尽
     くす。
  ・ 置かれた状況を考えない。
   ⇒誠実に耳を傾け学ぶ姿勢を示すべき状況なのか、それとも差
     し迫った問題を解決すべく機敏に指導力を発揮すべき局面か。
     を見極める。
  ・組織文化に順応できない。
   ⇒自分なりの方針が固まってしまっていることが多いが、まずは
    新しい職場では何が尊ばれるのかをまず知るべき。
 改革は波のイメージで新職場のことが分かってきたら、改革の波を起こす。やがて波のペースはゆっくりににあり、調和や学習の進化が進み、穏やかな凪の時期に入る。最後は小さな波で仕上げをし、組織の能力を最大化する。
  在任中に何をしたいか。一つは仕事上の目標(業績目標)、もう一つは望ましい行動や価値観(意識・行動改革)の要素から組みたてる。
  早く効果を出せそうな分野はどれか、有望分野を選び、緒戦の勝利をバネに改革を進める戦略を立てる。
 進取の気性に富み、計画に手を貸してくれるような意欲的な協力者を見つけてパイロットプロジェクトを立ち上げる。このパイロットプロジェクトを今後の意識・行動改革の突破口にする。

5.上司といい関係を築く
  ・嫌な上司に近づいていく。
  ・何か異常事態に気づいたら、とりあえず上司に一報を入れる。
   他のルートから上司の耳に入るのは最悪。
  ・上司を変えようと思うべからず。
  ・上司とうまくやるのは100%部下の仕事と心得るべし。
  ・早い時期にお互いの期待をはっきりさせるべし。
   小さな約束、大きな成果が望ましい。
  ・緒戦の勝利は上司が重視する分野で目指すべし。
  ・上司が信頼する人に好感をもってもらうべし。

6.組織をデザインする
  4つのSとひとつのCをデザインする。
  ・STRATEGY(戦略):目標達成までのグランドデザイン
  ・ STRACTURE(組織構造):人材配置と業務分担
  ・ SYSTEM(システム):業務プロセスの集合体
  ・ SKILL(スキル):個人やチームの能力
  ・ CULTURE(文化):価値観、規範、信念
 不協和音になりそうな要素を探り出し、それを正す設計図を引く。
 ・評価基準は、戦略とリンクしており、日々の意思決定に生かされているか。
 ・管理職の行動は戦略と矛盾していないか。
組織に関して、以下のことはしてはならない。
 ・ 深刻な問題を抱えているときに組織再編を試みる。
 ・ 組織構造をむやみに複雑化する。
  責任分担はできるかぎり明確に一本の線でつなぐ。
 ・ 業務処理を自動化する。
 ・ 改革のための改革に走る。何か実績を作ろうと焦るあまり、よ
  く事情もしらないまま戦略や組織に手をつけやすい。
 ・ 変化にすぐ順応できると高をくくる。口でいうのは容易だが組織が
  それに対応するのは決して容易ではない。

7.人事を固める
 ・不適切な人物を長いこと抱え込まない。90日の終わりには判断
  すべき。
 ・ 必要な手直しを先送りしない。
 ・ 組織戦略と人事は同時に行う。
 前任者から引継いだ部下を以下の評価軸で評価する。
 ・ 業務遂行能力
 ・ 判断力
 ・ エネルギー
 ・ 集中力
 ・ 対人関係
 ・ 誠実さ

状況を判断し、意志決定方法(リーダシップ方式とコンセンサス方式)を
使い分ける。

8.ネットワークを作る
 自分を支持してくれる人とのつながりを強固にすると同時に必要な
 能力や人脈など経営資源を備えた人たちと新たな関係を育てていく
 ことが大切。
 はじめに呼びかける相手を誰にするのか、順序に注意してよい連鎖
 を引き起こすことが必要。
 築いた関係をさび付かせないために、情報交換や話し合いを怠らない。
 状況が変化したとき、味方の反応に注意が必要。新しい試みを後押し
 してもらえるようにしていくことが必要。

9.上手にバランスをとる
  自分の今の状態を知る。重要な仕事をする時間は確保できているか、職場で孤立していないか。影響力は出せているか。重要な判断を先送りしていないか。
特に以下に留意する。
 ・ 計画を立てる時間を計画的に取る。
 ・ 困難な仕事のための時間を作る。
 ・ 厄介な問題を抱えている場合、感情的にならず、距離をおく。
 ・実行において部下がついてこない場合、意志決定の仕方に気を配る。
 ・状況によっては撤退も視野に入れる。
以下のようなアドバイザーのネットワークを作る。
 ・専門分野(技術、市場、戦略)
 ・組織文化(慣習、業務慣行)
 ・人間関係(裏事情)

10.全社的なサポート体制を整える

最後に、
① 移行期にうまくやれるかどうかは、状況を診断する力、その状況に伴う
  機会を発見し課題を見極める能力にかかっている。そうすれば何が足
  りないか分かり、適切な対策を講じることができる。
② 失敗の可能性を減らし、ブレイクイーブンポイントに早く到達するための
  体系的方法は、この本で述べている
   ・気持ちを切り替える。
   ・状況を診断し戦略を立てる。
   ・効率よく学習する。
   ・緒戦で勝つ。
   ・ネットワークを作る。
③ 移行期で何よりも大切なのは、高い目標に向かって走り出す好循環を
  生み出すことであり信用を失うような悪循環を絶対に起こさないことで
  ある。
  リーダ一は一人の人間に過ぎず、一人の人間にできることは限られて
  いる。だが信頼され評価されているリーダは、テコになれる。
④ 移行期は、リーダ育成のまたとない機会であり、このことを肝に銘じて
  昇進したばかりの人材を育てるべきである。
⑤ 移行期をスムーズに乗り切るための標準的なノウハウを備えておくこ
  とは企業にとってもメリットがある。

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