2009年11月23日月曜日

「日本の経営」を創る。三枝匡×伊丹敬之

「日本の経営を創る」を読む。経営学者伊丹教授とコンサルテイング会社で経営コンサルを行ったあと実際の経営に携っている三枝匡氏との対談である。机上の空論ではなく、実際の経営に造詣が深い二人の対談だけあって、参考になるところは多い。三枝氏は、「創って、作って、売る」の商売の基本サイクルを一気通貫でワンセットになっている組織を作ることが経営の基本と言っている。それ自身は極めて分かりやすい。


参考になる言葉等を以下整理していく。
 社長は、以下のような観点で、ビジネスプランにかかわるようにと説く。

「戦略とは何か」「何を考えたら戦略を考えたことになるのか」の考え方を幹部や社員に徹底させる。
「戦略とはこういう手法でくみたてるんだ」「あなたの戦略にはこういう要素や考え方がもれている」
「事業のストーリーが複雑すぎるから、絞ってもっとシンプルにしたほうがよい」「逆に考えていることが単純すぎて、このままやったらしっぱいするぞ」という感じでビジネスプランをたたく。
 「経営者人材というのは、経営的な打ち手としてどのボタンを押したら、どんなことが起きるかっていう経営の「因果律」みたいなものを頭の中にたくさんためることが大切だ」と言う。これは名言だと思う。実際の経験がないとこの因果律は創れない。
 以下も名言である。
「経営者人材が育つプロセスというのは、理屈で考えた、そこから導いた仮説を現場で実際にやってみた、ダメだった、また理屈で考えた、それでもダメだった、もう一度理屈で考えた、今度はうまく行った、そんな行ったりきたりの中で、因果律データベースを豊かにしていくこと。」

三枝氏の主な主張は以下のとおり。
「創って、作って、売る」の商売の基本サイクルであり、「研究」⇒「創る(開発)」⇒「作る(生産)」⇒「売る(販売)」が基本のサイクルである。
そのためには、会社の商品やサービスを買って下さるお客様を何らかの基準で、セグメント化し、それぞれのセグメントに供給する商品やサービスの「創って、作って、売る」が一気通貫でワンセットになっている組織ユニットを作る。そのユニットの責任者を明確にする。
しかしながら、「創って、作って、売る」のワンセット化にも課題がある。
①細分化による非効率化が起きる可能性がある。
②チマチマ病になる可能性がある。
③組織やノウハウの分断
具体的経験知として、一つの機能部門を事業ユニット別所属に分けるにしても、物理的には同じフロアに置いたままにしておくことがよいと説く。
顧客視点から始まる「創って、作って、売る」のスピードが重視されており、その事業ストーリーには
顧客セグメンテーションを含む戦略的考え方が軸にすべきである。そうすれば、事業へのコミットメント、自律性が大きな意味を生んで、それによって社員の目の輝きが違ってくる。この小さな組織が、「濃密な情報的相互作用の容れもの」として機能し始める。鮮明な戦略ストーリーで組織内の「戦略連鎖」をつないでみたら、その影響で機能組織をまたぐ「情報連鎖」や「時間連鎖」まで強烈にスピードアップし、その結果みんなが熱くなっていき、目が輝き「マインド連鎖」が出来上がって、それが大変な事業成果として表れ、その成功体験によって「組織カルチャーのキンク」が生まれてくる。ポイントは、自分たちでやれるというストーリーを創れること。そのためには、その大きさまで問題を分解しておくことが必要である。
事業の成功には、人の熱き心を刺激するような、論理的であると同時にシンプルで分かりやすい説明が不可欠であると説く。
主観として、事業再生は、入り口では戦略八割、終わってみれば人間関係八割と人間関係の重要さも説く。
 事業再生の成功要因は以下のように整理できる。
  ①改革コンセプトへのこだわり
  ②存在価値のない事業をすてる覚悟
  ③戦略的思考と経営手法の創意工夫
  ④実行者による計画作り
  ⑤実行フォローへの緻密な落とし込み
  ⑥経営トップの後押し
  ⑦時間軸の明示
  ⑧オープンで分かりやすい説明
  ⑨気骨の人事
  ⑩じっかりしかる
  ⑪ハンズオンによる実行

経営には、人間系が重要という経営の成果を求められ、成果を出して
きた人間にしか分からないことが多く述べられている。
経営は、スポーツで勝てるチームを創ること、また実際の試合で勝つこと
にかなり近いと最近は感じている。

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