会社で職位があがるにつれ、自分が個人として如何に成果をだしていくかよりも、自分の属する組織が如何に成果を出していくかに関心が移ってくる。組織で成果を出していく「組織力」の重要性に気づくと言ってもよい。この「組織力」について、体系的に分析し、組織力を上げるための処方箋を具体的に書いたのが「組織力を高める」-最強の組織をどう作るか-である。
まず「組織力」とは「自らを変革し結果を出していく力」とし、以下のように定義する。
「組織力」=「戦略能力」×「遂行能力」
「戦略能力」:「シンプル」で「整合性」の取れたビジネスモデルを
構築し、 組織と戦略ともに進化していく適応力。
「遂行能力」:業務をやり遂げ改善していていく「完遂」する能力で
あり、さらには継続的に結果を出し続けていくために,
人が育ち、組織の至るところで「期待を超える動きが
沸き起こってくる能力。
つまり、「組織力」は、「戦略能力」と「遂行能力」の掛け算であり、このどちらか一方でも欠ければ、高い「組織力」は望めないと言っている。また両方をつなぐのがマネジャーの役割とも言う。
かっこよい戦略を作るが、成果を出せない組織(例:出井社長が率いたSONY)は、「戦略力」はよいが、遂行能力が弱かったと言えるだろうし、徹底して現場改善するが成果を出せない組織(例:中村社長が就任する前の松下)は、「遂行能力」よりも「戦略能力」に問題があったと言える。「組織力」を上げるためには、「戦略能力」と「遂行能力」それぞれを上げる必要があり、それらの施策については、後述していくが、「組織力」を低下させる要因についても以下に整理しておく。
その要因は以下の4つの「減衰」である。
◆「情報の減衰」:本来伝えられるべき内容が抜け落ちたり、歪めら
れたり、行間のニュアンスが消えて正しい情報が、
有されない。その結果、組織がバラバラの方向
を向いたり、やるべきことが行われなかったり、
部門間の縦割り文化が生まれたりといった問題が
発生する。
◆「力の減衰」:チームとしての力が発揮できない事を言う。
マネジャーがチームの行動特性を理解せず、メン
バー一人ひとりに的確な指示を与えず、さらにフォ
ローが不十分な場合に発生する。
◆「フィードバックループの減衰」:何事につけフィードバックループなしで
は物事は改善していかない。組織の中におけるフィ
ードバックループはまさに日々のオペレーションを
遂行し、その結果を評価し、更なる改善につなげて
行くことに他ならない。この減衰が起きるのは、
マネジャーが、メンバーに、当初の目標をきちんと
理解させず、達成結果を振り返らせないことによる。
◆「顧客の声の減衰」:組織が大きくなると、階層構造、機能分化が
進み、組織のメンバー全員が顧客と接するということ
も難しくなり、組織内では部門間の調整ばかりに手間
がかかってくるようになる。「顧客の声の減衰」と同時
に組織と顧客の関係で、問題が発生してくる。
それは外部の変化(顧客ニーズ)と組織の対応の間に、
時間的なずれ、すなわち対応の遅れが生じてくる。
「組織の時計」と「顧客の時計」でずれが生じてくる。
これらの減衰のほとんどは、人のもつ特質や能力に根ざしたものであり、この減衰作用を抑え込む鍵もまた、人そしてマネジャーにある。
以下具体的に、「遂行能力」、「戦略能力」を向上させる施策について見て行く。
1.「遂行能力」を向上させる。
マネジャーが自らのチームを率い、その目標を「やり遂げる」ために不可欠なポイントは以下の五つに整理できる。
・ ワンランク上で考え、ワンランク下で手足を動かす。
・ 「聞く力」を鍛える。
・ 自分の力で伝えぬく。
・ 自らを厳しい環境に立たせる。コミットメントを持つ。
・ 「先を読む力」をつける。
完遂するためには、以下のステップをきちんと踏むことが不可欠である。
① 目的を深く理解する。
② 確実に伝える。
③ 具体的な目標・活動に落とし込む。
④ 遂行させる。
⑤ 完了を見届ける。
さらにメンバーは、以下の能力をつけることが求められる。
◆ 全体像を理解する力をつける。
◆ 報告力をつける。:何を伝えるべきか、相手は何を知りたがって
いるのかを理解する。
◆ 交渉力をつける。:相手とよい関係を築き、それを長く続ける。」
人を育てるためには、キャリア意識を育てることが必要。そのためには以下のステップでキャリアプランを作成する。
① 自分の興味や関心を客観的に整理する。
② 自分の価値観を認識する。
③ 将来の自分の姿を描く。(10年先)
④ 知識や体験などを棚卸し、あるべき姿と現在の自分の
ギャップを明確化
⑤ シナリオを作成する。(複数、1年から数年単位)
3.戦略能力を向上させる。
組織の「戦略能力」を高めるという観点から、マネジャーが持つべき能力のポイントは以下の2つに整理できる。
◇ 顧客ニ-ズと戦略を内包する「シンプル」で「整合性」のあるビジ
ネスモデルを考え抜き、実施していこうとする意思を持つ。
顧客のニーズや戦略(資源配分とその運用方針)、事業推進の
ためのルールなど個々の要素がしっかりとした理屈で結びつき
事業推進の力を組織に与えることが必要である。
◇ 常に顧客視点の考え方を忘れず、顧客と共有する「場」を全て
の中心に据える。
顧客と企業が共有する「場」にこそ、顧客の真のニーズや生の
声、成長やブレイクスルーのためのヒントや答えがある。
その「場」と組織全体がどれだけ密着できるかが、その企業の
競争力を左右する。
組織の課題を克服する対策をとる場合、以下を怠ると失敗する。
◇組織の「段階」を見誤る。
◇スピード感を見誤る。
◇打ち手の間に「整合性」をとらない。
組織の「段階」にあった対策とは以下のことを言う。
① 起業者段階:トップマネジメントとマネジャー間、マネジャーと
メンバーの間で職務分担を明確化していく。
② 共同化段階:複雑になりがちな業務プロセスをできるだけ
シンプルなものにしていく。
③ 公式化段階:意識的に組織内のコミュニケーションを行って
いく。
④ 精巧化段階:官僚主義が行き過ぎてしまった場合は、大胆な
再活性化のための破壊と創造が必要になる。
「組織力」という抽象的なものを、「戦略能力」と「遂行能力」に分解し、それぞれの能力を向上させていく施策を、現場に分かるような形で整理できているという点で、この書籍は参考になる。
2009年12月23日水曜日
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