2009年12月13日日曜日

中国分裂7つの理由

中国がここ数年で、世界の経済、政治でプレゼンスを大きくしてきている。中国について少し知りたい思ったが、世界史で習ったレベルの知識しかなくまた最近の動きについて断片的なことしか知らない。広大な中国は、いろいろな民族の集まりであり、それぞれの地域で特性があり、将来的に分裂するという主張を展開しているのが「中国分裂7つの理由」(宮崎正弘)である。7つに分裂するかどうかは分からないが、中国という広大な国土を有する国家の複雑性を理解するには大変参考になる。ウイグル族の反乱、チベットの独立運動、内蒙古の民族自決、それに「経済圏」の分解で上海、福建、広東、香港、マカオも独立してゆく可能性がある説く。
 中国を正しく理解するためには、中国は近代政治学が定義する「国民国家」ではなく、古代王朝の延長線上にある「独裁王朝」であることを認識する必要がある。秦の始皇帝以来の漢、隋、唐、宋、元、明、清王朝と続いた支配機構が「共産党王朝」に変わったのだという。まがりなりにも一つの国家に見えるのは、軍事力という凄まじい力で強制的に束ねているためだ。さらにこの軍隊が国軍ではなく中国共産党に従属する私軍であり、外国と戦争をする目的よりも国内の反政府勢力をひねりつぶす弾圧装置の一環という性格が強いという。この軍事力が効かなくなると分裂して行くという論理である。また驚くことに、人口の高齢化、高学歴化、少子化の影響で2050年までに65歳以上の人口がが全人口の40%に達する見込みであり、中国の今後に少なからぬ影響を及ぼす。
地図なしでは、イメージがわかないので、地図は以下のリンクを参照。
中国の地図と経済圏

参考に詳細な中国の行政区画ごとの地図や情報は以下のへリンクを参照。
http://searchina.ne.jp/map/index.cgi?citylist=1


1.北京・天津経済圏
 北京は天津などの沿岸都市を飲み込んで「北京・天津経済圏」を形成し、この中には遼東半島の大連などを含み、河北省、河南省、山西省にまで及ぶ経済圏を想定する。天津には、トヨタの主力工場の一つがあり、今後製造業も発展する。温家宝は天津出身。

2.上海経済圏
 上海メガロポリスは、蘇州、杭州、無錫、南京までのセツ江省、江蘇省を中心に河西省、安微省から河北省までまたがり、そのすぐ南の福建省も上海経済圏が飲み込む勢いがあるようだ。金融、ハイテク、IT等は上海に集中しており、海外からの居住者も多い。ちなみに上海在住日本人は、5万人でニュヨ-クより多いそうだ。江沢民も上海市長を経験者であり、恩来はセツ江省出身である。

3.華南経済圏(広東、四川、福建)
 華南経済圏は、孫文を生んだ革命的志向が強く情熱的な人が多く、商売熱心の土地柄のようである。広東経済圏は、香港に隣接の深せん、東莞、珠海、中山、仏山、肇慶、恵州など広州が中枢となり、さらに湖南省などへまたがる。製造業の中心である。もともとが半中央、独立精神旺盛で広東省を中心とする経済圏単独で全中国の20%を稼ぎ出している。四川省が、重慶、雲南などを飲み込んで四川経済圏を作る可能性もある。さらには福建省が、対岸の台湾へ重点を移して華中の上海に対抗する独自の経済圏を作る可能性もある。ちなみに鄧小平は葉剣英に保護されて失脚の時代を広東で耐えたとのこと。また毛沢東は湖南省出身。

4.チベット居住権
 西暦七世紀から九世紀にかけて興隆を極め、763年には唐の都長安を軍事陥落させた。チベットが、後世のモンゴルのように漢族の中原を治めていればチベット王朝を構築できるほどの勢いがあったようだが、杜蕃王国が南北に分裂し、群雄割拠となったため、実現しなかった。1950年中国はチベットの併合を宣言し、軍隊による制圧を行った。チベットは、以下の目的で侵略された。
宗教の問題だけでなく、経済的な要因あることを知った。
 ① 膨大なレアメタルの資源確保。
   金銀銅はもとより、クローム、鉛、ウラン、鉄鉱石のほか石油鉱区もある。
 ② 宗教的な脅威。
   共産主義は、他の宗教を認めるわけにはいかない。
 ③ 水源の確保。
   黄河、長江の水源は、チベット高原。

5.ウイグル自治区
 ウイグル自治区は歴史的にも文化的にもウイグル人の土地であり、1944年から1949年までは「東トルキスタン」という独立国であった。民族的にはトルコ系であり大半がイスラム教徒である。1944年から1984年にかけて300万人の漢民族が移住し、現在は漢民族が多くなっているようだ。
6.東北三省(黒竜江、吉林、遼寧)
 清朝が統治していた期間は、この地は無人に近く漢民族の入植が禁止されていた。ところが日本が満州に進出して新国家建設が始まるやいなや、山東省を中心に年間100万人の漢族が移住し、革命後は満族が追い出され蒙古族も弾圧された。地理的に朝鮮族が多いこともあり、韓国等が輸出企業を積極的に立ち上げているようだ。基本的には、漢民族の中国とはかなり異なると思われる。

このように中国は、民族的にも宗教的にも多様であり、理解が難しいことがよく分かった。
中国人の思想を歴史的に分析し、分かりやすく書いた「これが中国人だ!―日本人が勘違いしている「中国人の思想」を読んだが、今思えば中国人の思想ではなく、漢民族の思想と理解したほうがよさそうだ。

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