フロンティア突破の経営力-時代を切り開く「事業、組織、人材」戦略(小川政信)を読む。
タイトルがダイナミックな感じで、タイトルと推薦文に惹かれて購入した。
事業に携っているものは誰しも、「打ち手について想定しているものがあり、さらに「その前提となっている世界」を無意識に思い描いている。ところが事業のメカニズムの解明を行うと、予想外の重要事実が発見され未知の世界が垣間見え始めるという。つまりフロンティアが全く想定外の世界にあることが判明する。このようにフロンティアを発見し、それを突破するための思考法を説く本である。具体的には、サンプル数は少なくてもよい(例:N=3)ので、事業の戦いの現実のメカニズムを
粗削りでよいから確認する「情報収集」と「思考」を制御する感覚の重要性を説く。
問題分析するために、チームで意見交換するが、意見で経営判断を行ってはいけない。意見は当人の「認識」に基づいているものであるが、「認識」というものは、しばしば間違っていると言い、意見交換より重要なことは、事業の成否を決める現場・現実のメカニズムの解明であると主張する。
N=3のサンプルでもよいので、
・原因はAかBか、はたまたCか、
・打ち手はXかYか、
・いくつかの打ち手を同時にとらないといけないのか、それとも
むしろ一方だけのほうがいいのか
・それらの問いについて答えをしるのは何が分かればいいのか
・今何をすべきなのか
という「消去法的に情報や思考を制御する感覚」と「結論を左右する分岐点となるポイント、論点、
イッシュー、情報を見極める感覚」が必要と説く。
具体的には、プレミアムビールの攻防戦について論じ、上記の分析の有効性を実証している。
なぜプレミアムビール市場で、サントリーだけが成功できたのか。迎え撃つサッポロ・エビスはどうしていたのか。キリンとアサヒはどうしていたのか。
22名のサンプルデータで分析したときに価格にもかかわらずビールを選好する者が8名いた。
プリミアムセグメントの売上比率は全体の1~2%なのに、価格を気にせずビールを選考するものが20%おり、プレミアムセグメントの伸びる余地はありそうだ。価格を気にせずプレミアムビールを好んでいるもの大半が、ビールメーカのブランドはどこでもよいと考えている。しかし結果的にはサントリーを選んでいる。つまりCMの影響だといえそうだ。
サントリーは、プレミアムセグメントがまだ潜在的に延びる余地があること、CMによって選好されて
いることを理解したがゆえに成功したのである。
それぞれのビール企業は、見ている(重視している)戦略空間が異なっているという。
アサヒ:ビールは新鮮さが鍵ということとそのためには商品回転力が
重要であり、カテゴリー毎のトップブランドの確保
キリン:商品開発力、商品等入力、それら多彩な商品の営業提案力
サッポロ:原材料の品質と調達
サントリー:製品カテゴリーごとの商品投入戦略と一気呵成の広告認知戦略
このようにビール業界の分析を通じ、企業によりリーダにより見ている戦略空間が異なっていたこと、大方の業界内関係者では、自分たちがみている戦略空間の外に重要な戦略次元が存在していたこと。そうした中で最重要な戦略空間・戦略次元を発見することは、市場という戦場の現場・現実の観察や調査分析によって可能であったことを示している。
2009年12月5日土曜日
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