ノール・M・ティシーと言えば「リーダシップエンジン」や「リーダシップサイクル」のリーダシップに関する書籍で有名であるとともに、ジャックウエルチに請われてGEでリーダシップ研修を実施しているというリーダシップの第一人者である。
「決断力の構造」では、リーダシップの核心にある「決断」について述べている。単独個人の決断の瞬間について述べているのではなく、決断の準備、決断の宣言、決断したことの実行の段階について述べている。決断の領域としいて、「人事」、「戦略」、「危機」を取り上げている。優れた決断を下すためには、リーダ自身や周囲との人間関係、組織、ステイクホルダーなどについての的確な状況把握が必要と説く。
この書籍により、大きな組織を運営していくためには、経営を推進するリーダたちに業務を遂行させることがポイントであることを認識できた。小さな組織のリーダが、必ずしも大きな組織のリーダとしては、成功できない理由がここにあると思う。大きな組織を運営していくためには、以下のことが必要であることが分かる。
●リーダたちさらには社員とのビジョンの共有
●推進の仕組みの確立
●評価の仕組みの確立
ポイントを以下に要約していく。」
1.決断とリーダシップ
◆決断を下すという仕事は、リーダの職務の核心。
・的確な決断を下さなければ、あとのことは何の意味もない。
◆長期的な成功だけが、的確な決断であることのただ一つの指標と
なる。
・優れたリーダは重要な指示を的確に出すことに集中している。
◆リーダはさまざまな決断を宣言し、その実行にも目を光らせる。
・有力な支持者との関係に腐心する。
優れたリーダは、指示を出す必要性を見極めるところから始まって、問題を明確にし、何がもっとも深刻jな問題かを考え、メンバーを動員し鼓舞するところまでをこなすプロセス全体に通じている。
2.リーダ決断のフレームワーク
◆優れた決断の宣言はプロセスであって、儀式ではない。
・プロセスは実行と修正作業を重ねながら続いていく。
◆リーダは三つの決定的な領域で宣言をしなければならない。
・人事についての宣言がもっとも難しく、しかももっとも重要で
ある。他の主要な領域は、戦略と危機である。
◆優れた決断を下すために必要なのは、自己認識である。
・それは個人プレーではない。支えてくれるチームが決定的に
重要だ。
・周りの人たちを取り込むことが成功につながる。
<1>リーダシップの決断プロセス
(1)準備
①気づいて見極める。
②規定し分かりやすく表現する。
③動員し、態勢を整える。
(2)宣言
①決断を宣言する。
(3)実行
①ことを起こす。
②学んで調整する。
<2>よい決断プロセス
(1)準備
①気づいて見極める。
・置かれた環境の下で見極める目をもつ。
・行動を起こす態勢を整える。
・将来に備えて活力を蓄える。
②規定し分かりやすく表現する。
・込み入った状態に切り込み核心に迫れる。
・問題の要因を明確に分析する。
・背景と分かりやすい表現を教える。
③動員し、態勢を整える。
・有力なステイクホルダを見極める。
・明確な目標に向かって周りの人を巻き込み燃えさせる。
・あらゆるところから最高のアイデアを引き出す。
(2)宣言
①決断を宣言する。
・YES、NOの決断を下す。
・決断を明確に説明する。
(3)実行
①ことを起こす。
・リーダは現場に踏みとどまる。
・ことを起こそうとしている人たちの力になる。
・明確なマイルストーンを設定する。
②学んで調整する。
・フィードバックを手に入れる。
・調整を加える。
・フィードバックは次々に入ってくる。
<3>悪い決断プロセス
(1)準備
①気づいて見極める。
・置かれた環境が読めない。
・現実の直視を怠る。
・腹をくくれない。
②規定し分かりやすく表現する。
・誤った決定・決断を具体化する。
・最終目標が明確に定まっていない。
・古い態勢に固執する。
③動員し、態勢を整える。
・明確な将来像を描けない。
・不適切な人材
・全く自らを正そうとしない。
(2)宣言
①決断を宣言する。
・相変わらず間違った宣言をし、意地を張る。
・ものごとがどのように反応しているか、どのように進ん
でいるかを考えようとしない。
・逃げ腰になる。つまりぐずぐずしてなかなか宣言を
しない。
(3)実行
①ことを起こす。
・リーダは現場から消えてしまう。
・悪い情報
・あらゆる原因に目を凝らすのを怠る。
②学んで調整する。
・組織の抵抗。
・全くないあるいは見当違いのメリット。
・変化に対処できる業務遂行の仕組みが欠落している。
3.ストーリーを用意する。
◆本物のリーダは、精神面のフレームワークを優れた決断を
下すための指針にする。
・”人に教えられる視点”によって、方向と行動の価値観が
定まる。
・ストーリーを語ることによって、将来のシナリオを活き活きと
伝えられる。
◆最高によくできたストーリには説得力があり、そして実践的である。
・次々に起こる出来事に見られる異質な要素を互いにつなぎ
合わせてくれる。
・このストーリーによってリーダは、規模、複雑さ、そして不透明
な状況に立ち向かえる。
◆ストーリーは生き物、変化し続ける環境に応じて進化する。
・リーダはさまざまな選択肢を加えることによって、可能性の
ある結末を探る。
・ストーリーは、組織のあらゆる階層で脇筋を書くための足が
かりを用意する。
4.品格と勇気
◆優れた決断を重ねるには、リーダに品格と勇気が備わっていな
ければならない。
・品格は道徳的な基準を示してくれる。
・勇気は成果を生み出してくれる。
◆品格のある人は明確な基準を持っている。
・常に責任を負い、その責任を全うする。
・世の中の評判よりも自分に恥じない姿勢を大切にする。
◆障害にぶつかっても基準を守るには、勇気が必要だ。
・品格は、そこに勇気がなければ、意味がない。
・勇気は、そこに品格がなければ、危険なものだ。
5.人事の決断の宣言
◆人事の決断は、戦略と危機両方の優れた決断をするための
礎である。
・チームに誰を入れるか、誰を外すかの決断。
・優れた決断を支持してくれるチームをトップ層に作る。
◆まずチームありき、戦略は二の次。
6.人事の決断 後継CEO選び
◆CEO選びはもっとも重要な人事の決断
・すべての決断はCEOの決断から始まる。
・外部からの登用は社内のプロセスが間違っている兆し。
◆好調を維持し続ける組織は、リーダ輩出の仕組みを作っている。
・幹部候補者を数多く抱えている。
・あらゆる階層でリーダーを育てている。
◆よいCEOの継承プロセスは公明正大なものだ。
・CEO職の要件が明確に規定されている。
・組織の成功が最終的な判断基準。
7.戦略の決断
◆戦略の決断は絶えず進化している。
・大枠のストーリーによって、多くの脇筋の話の枠組みが
できあがる。
・戦略的行動はそれぞれに、次の宣言の舞台を整える。
◆リーダは、自分なりの戦略を練り上げなければならない。
・宣言は官僚主義的な”企画屋”に任せてはならない。
・宣言は絶えず見直し、更新する必要がある。
◆戦略的な思考は論理と感情の融合だ。
・質問と答えを具体的に示せるリーダの知性が必要。
・周りの人たちを実行へと駆り立てられるリーダの感情的な
エネルギーが必要。
8.危機における決断
◆実力のあるリーダは自ら、危機対処する責任を取る。
・危機の本質を正確に規定する能力は、絶対に欠かせない。
・政治的な混乱に対して実際的科学的対処をすると、破滅に
つながることがある。
◆危機に臨んだときにおかす一般的な間違いは、自分の最終的
な使命を見失ってしまうこと。
・緊張感を緩和させる対処をしても、必ず目標に近づける
わけではない。
・危機がもたらす混乱によって、思いがけないチャンスが到来
することもある。
◆人事や戦略にまつわるお粗末な決断が、危機につながることも
ある。
・危機に面したときは、頭がよく忠誠心のあるチームが最も
重要である。
9.リーダシップを育成するチャンスとしての危機
◆優れた決断をするリーダには、危機に備える心構えができている。
・一つにまとまった信頼できるチームに恵まれている。
・明確な”人に教えられる視点(教えることができる視点)と
ストーリーを持っている。
◆危機が来ると、連戦連勝のリーダは、即座に反応する。
・必要な知識のある人材を投入する。
・一つにまとまったリーダのチームを動員して、素早く実行する。
◆危機そのものがリーダシップ育成のチャンスになる。
・リーダは成功に必要な行動のロールモデルを示す。
・分かりやすい教育のプロセスが、全員を非常に重要な問題
に集中させる。
2009年12月5日土曜日
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