2012年5月4日金曜日

模倣の経営学

ビジネスモデルのイノベーションに関心をもっていたところ、
わかりやすく、面白い本に出会ったので、読書ノートを書く。
ビジネスモデルのイノベーションについて考えるためには
わかりやすく本質を考えるために大変有益な本である。



この著者は、以前『収益エンジンの論理』という本を書かれて
おり、興味深く読んだ記憶がある。



まず、成功した企業の影には、仕組み・ビジネスモデルを他社
から模倣していることがあると説く。
クロネコヤマトは、メニューを絞り込むことを吉野屋から、
配送密度・方式をUPSから、サービスの標準化・商品化を
ジャルパックから、それぞれ模倣し独自のビジネス モデルを
創造した。
スターバックスは、ヨーロッパのカフェから「くつろぎと交流
の場」を提供することを 模倣したが、文化の違いからイタリア
の音楽やバリスタは途中で変更し、従業員との信頼関係
( パータタイマーへの社会保険の適用、教育 ) をベースとし
た直営展開のビジネスモデルを展開した。
それに対し、ドトールコーフィーは、同じようにヨーロッパの
カフェーを模倣したが、「健康的で明るく老若男女とみに楽し
める店」のコンセプトで「低価格・高回転」のビジネスモデル
を展開した。

1 . 模倣するための枠組み
模倣するために、ビジネスモデルを以下の枠組み ( P-VAR )
で分析・整理する。
①ポジションのとり方 ( Position )
競合ポジション、顧客セグメント
②提供している顧客価値 ( Value )
価値提案 ( 顧客が評価するもの )
③課金の仕組み
④主要業務の活動 ( Activity )
鍵となる活動、成長エンジン、収益エンジン
⑤鍵となる経営資源 ( Resource )
鍵となる経営資源、チャネル、顧客との関係性、パートナーシップ

2 . 事業創造・変革の5ステップ
P-VARの枠組みを活用し、以下のステップで模倣し、新しい事業
モデルへ発展させる。
①自社の現状を分析する。
②参照モデルを選ぶ。
③あるべき姿の青写真を描く。
④現状とのギャップを逆算する。
⑤変革を実行する。

3 . 「守・破・離」
(1) 学ぶべき対象
①社外の成功 ( 単純模倣 )
ラインエアはサウスウエスト航空のLCCモデルを模倣。
②社外の失敗 ( 反面教師 )
グラミング銀行は大手銀行の一度に相応の額を貸付、
まとまった形で返済させるモデルを反面教師とし、
女性を対象に一回一回の返済額を小額にしたビジネスモデル
を創出した。
③社内の成功 ( 横展開 )
ジョンソン&ジョンソンは、医療用器具の使い捨てモデルから、
使い捨てモデルのコンタクト ( アキュビュー ) のビジネス
モデルを展開。
③社内の失敗 ( 自己否定 )
オークランドアスレチックは、「貧すれば窮す」の状態から
「安く勝利する」ための方法を考えた。
具体的には、けが人や年齢が高いというワケありの選手、
見栄えがパットしない選手でもデータの裏づけが あれば採用し、
実績を上げた。

(2) 守・破・離
まず徹底的に倣い、その上で「お手本」の教えを破り、しかる後
に自らのモデルを 確立する。

4.創造的模倣の手法
模倣の目的によって作法は異なる。
この本での主張は仕組みレベルでのイノベーションの必要性である
が、参考のため、 製品・サービスレベルでの模倣についてまずは
以下に述べる。
(1)製品・サービスの模倣
競争への対応を目的にする模倣であり、同業で成功した企業の動き
をそのまま模倣する。攻めの姿勢で競争相手を模倣する迅速追随模
倣と他社の成功や失敗を見届けた 上で、圧倒的な経営資源で先行者
を追い越す後発優位模倣とがある。 さらに、相手を優位に立たせて
はならない「負けないための模倣」同質化がある。
(2)イノベーションのための模倣の作法
①大きな潮流を見極めて対象を選ぶ。 ( 業界 )
②対象に棲みこむことで模倣する部分が分かる。 ( 対象 )
③経験を積み、常に意識していれば、一部をみて全体が分かる。 ( 自分 )

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