マネジメントの現場で役立つ本に出会った。
書籍等で読んだトヨタの組織力・人材育成力や、一時期一緒に仕事を
することにより垣間見た住友銀行の人材育成の仕組みも、体系化すれ
ば、こうなのだろうと思える本であった。大変内容が濃いと思う。
マネジャーには大変役立つ本であることは言うまでもないが、
経営の現場での地味な実践がどのようなものであるかを知るために
も、コンサルタントや経営学者等もぜひ読むべき本であると思う。
著者の略歴を見ると、上記2社について関わりもあるようである。
私自身、マネジメントにおいて実施しつつあることが、体系的に
書いてある感じで、自分の頭を整理するためにも大変役立った。
『5つのマネジメント・プロセス』 二宮靖志著 である。
1.基本的考え方
「人は困難な仕事を経験しないと成長できない」
「実践の場や機会があってこそ真の実力(つまり成長)に繋がる。」
と厳しい仕事を成功させることにより人材は育つとの基本的認識から
スタートする。
企業が成長し、人ジアが成長するためには「仕事の変革」を続ける
仕組みと、「仕事の問題解決を通した人材育成」を継続する仕組み
を確立することが必要である。
マネジャーは、「一緒に取り組み、成功させる。成功するまで指導
を続ける。」ことが求められており、その中で「アサイン」は、
「どのような仕事」で「どのような経験を積んでもらうか。」
メンバーの「成長機会」に対するマネジャーの重要な意思決定で
ある。
会社の成長戦略とチームの目標達成、それに人の成長と育成ビジョン
を重ね合わせて考えることが必要と説く。
そのためには、「チームワークやモチベーション」以上に「競争と
格差の環境つくり」が必要と述べている。まったく同感である。
住友銀行やトヨタのようなしっかりした企業の特徴でもあるように
思う。
1.成長する組織を作るのに必要なこと
マネジャーは現場最前線の経営者である、つまり「業績の構想」
「業績を上げる具体策を考えなければならない。
そのためには、業績の構造図(売上、購入価値、付加価値、人件費、
企業活動費、営業利益)をまず把握する。
業績の認識なくして、仕事の構造改革も仕事を通した人材育成も成立
しない。
10年先の人材を今から育てることに取り組むべきであり、その枠組み
がライバル会社に水をあける強みになり、会社成長の原動力になる。
マネジメントは、「目標達成」のために「経営資源を効果的、効率的
に活用することであるから、マネジャーは、
「仕事の構造化(構造転換)」と「人材育成(人が育つ環境つくり)」
に責任を持つことが必要である。
マネジャーは、行動要件として以下が求められる。
①目標を決める。
②期待を伝える。
③自ら動き、メンバーを動かす。
④仕事を通して人を育てる。
⑤ほめる、認める、報いる。
この5つのマネジメントプロセスをきちっと回すことが成長する組織、
強い組織を作ることといく。
個別論を順次見ていく。
2.5つのマネジメントプロセスの改革個別論
(1)マネジメント・プロセス改革1:変革を生み出し目標設定
①業績の傾向をつかみ、仕事の変革を考える
未来軸で業績向上を考える。仕事の変革をチームの目標とする。
②自分で考えなければ経営計画は理解できない。
マネジャーが会社方針を自問自答
③経営計画を「逆読み」する。
経営層が作成する経営計画を熟読し、なぜこの計画なのか、
その背景には何があるのか、さらにはその先には何が実現した
いのかを考える。
④現状、到達目標、プロセスと時間軸で考える。
3年後の到達点、1年後の到達点
⑤目標設定は「定性が先、定量が後」
言葉で「死後のありたい姿」その上で定量目標を設定する。
(2)マネジメント・プロセス改革2:成長課題を一人ひとりに
展開する。
①成長の期待を組織図に書き込む
組織図の裏側にはミッションがある。一段高い課題を伝える。
②仕事の理由は現場にある。
現場を歩く感覚はマネジャーの必須条件。社外の顧客ニーズ
を拾って歩く。マネジャーは部門連携の要。
③ロジックツリーで会社の成長と個人の目標をシンクロさせる。
業績向上と組織能力向上を連携させる。
原因追求ロジックツリー、方策立案ロジックツリー
行動変革のイメージ作りが必要で、そのためにマネジャー自身
は、事前に会社成長の構想を練り、優先順位をつけた重点施策
のイメージを持つ。
ロジカルな連鎖の中で課題を発見する。
意見を対流させ、ロジックツリー検討会を充実させる。
④業績向上に対する厳しい認識の上に立つ
会社の成長を基準とするマネジャーの判断
定性的課題は将来の業績向上が見えなければ×判定する。
チームと会社をシンクロさせるマネジャーの責任
(3)マネジメント・プロセス改革:実行徹底のためのPDCA
の仕組み
①PDCAは続けてこそ意義がある、
特にCAの部分において、マネジャーがメンバーとコミュニ
ケーションをとりながら仕事の成功に向けて指導する
部下発信の「報・連・相」、上司発信の「PDCA」
②PDCAの仕組みと勘どころ
・方針の解釈
会社の方針を経営者のスタンスで再考する。
・目標を決める
現状に対する課題認識を持ち、ゴールを決める。
・期待を伝える
討議を重ね、目標に対する理解を深める。
・四半期計画
時間を区切り、具体策を計画する。
・月次計画
計画を実行に移す執着心を引き出す。
・スケジュール帳
仕事の着手日、納期等を書き込む。
・2週間レビュー
行き詰まっている悩みや、一人では解決でき
ない問題点を吸い上げ、解決策をともに考える。
・月次レビュー
取り組みの結果を自己判定する。
・四半期レビュー
成果にこだわり、仕事を振り返る。
・年間レビュー
メンバーが主体的に、自分の仕事を振り返り、
成功と失敗の理由を考え、翌年の活動計画に
反映する。
一対一面談だけでなくチーム討議を充実させる
(4)マネジメント・プロセス改革:チームで人を育てる。
①人の強みで業績を上げる、業績を上げる仕事で人を
育てる
人の判定ではなく、人の成長をひたすら追う。
人の強みと弱みを知る。
②過去形の評価から未来形の育成へ
人材育成会議の効果
キャリア形成を重視、マネジャー同士が検証し学習
する場、上司が決めたアサインも検証
上司が部下の評価をプレゼン(仕事、指導、取り組み、
成果)
会議体で評価ランク、フィードバック内容を確定
成長課題(新しい経験、開発能力の討議)
(5)マネジメント・プロセス改革:成長のカンフル剤
褒めて、認めて、報いる仕組みが必要。
昇格にも競争原理を入れる。これは組織活力の源泉
マネジャーの目線で見る人事制度とは人の活用を考え、
仕事に対する人の
意識を切り替えるためのマネジメントツールと考える。
評価は指導そのものであり、毎日の部下との接点に
仕事に対する指導の積み重ねがあってこそ、評価は
成り立つ。
きちっとした会社、職場ではできていることだと思うが、
ここまで体系化されたものは今までにないのではないの
ではないだろうか。
学術的でもなく、現場のハウツーでもない、実際に会社を
経営していく、職場を運営していくためが読むべき書籍だ
と思う。経営の厳しさを体感されたこのようなコンサル
タントがおられることにも驚いた。
以上
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