2011年9月19日月曜日

ダニエルカーネマン 心理と経済を語る

個人が集まって組織を作ったとき、個人の意思がどのような組織行動(administrative behavior)を帰結するかに関心を持っている。合理的な個人を前提にゲーム理論等で組織行動を分析することも必要だと思うが、不完全情報の下での個人の意思決定を前提とした組織行動の分析が現実解のようにも感じている。
その問題意識の下、『最小合理性』勁草書房、『心は遺伝子の論理で決まるか』みすず書房を図書館で借りてきたが、なかなか取り組めていない。
以前購入して積んでいた『ダニエルカーネマン 心理と経済を語る』を、今日突然読んだ。
心理学者でノーベル経済学賞受賞のカーネマンのノーベル賞受賞記念講演と自伝、さらに二つの論文「効用最大化と経験効用」と「主観的な満足の測定に関する進展」 を翻訳した本である。プロスペクト理論やヒューリスティクス等キーワードと概念 は経済心理学や実験経済学の本で知っているが、なぜこのような概念を思いついたのかはよく知らなかった。その理論を構築した本人が書いたものであり、この本を読むことにより、大変よく理解できた。特に記念講演と自伝を興味深く読んだ。 受賞記念講演の中からポイントとなるところを以下に記す。
 



(1) 知覚の特性①・・・・・・「変化」に集中し、「状態」を無視する。
目から脳に伝えられる情報のほとんどは、変化する物事、前とは違う物事に ついての情報である。 現在の刺激だけによって決まるのではなく、現在の刺激と過去の刺激との間の 差異によって決まる。 ⇒プロスペクト理論 効用(満足度)を決めるのは「変化」であって「状態」(富の絶対量)ではない。 知覚と類比させて考えてみたこと、適応という概念を借用したこと、そして 中立的な参照点という概念が、プロスペクト理論の発展を導いた。
(2) 知覚の特性②・・・・・足し算すべきときに平均値を求めてしまう。 
基本的な知覚的な表象には、例えば全部の線を足した長さがどのくらいに なるかというようなより複雑な統計は含まれておらず、平均値は直感的に ただちに分かるので、平均値に基づく判断を行ってしまう。 平均値は表象に含まれているが、合計は含まれていない。
表象に含まれているもの。
 ・ 平均値/典型的な値
 ・ 極端な値
 ・ 特徴の(おおよその)相対度数 表象に含まれていないもの。
 ・ 合計などの統計値

アンカーリング:数値や物事を推定したり調整したりする際に、与えられた 初期値が錨(アンカー)のような機能を果たし、人の志向がそこに縛り付けられる こと。またそれによって判断に影響が及ぶこと。
ある人が、あるグループもしくはカテゴリーに属すかどうかを判断する。
(例1)
「・・・大学では哲学を専攻。・・・学生時代に反核デモに参加。」    この人は、A:「銀行の出納係り」       B:「銀行の出納係りであり活発なフェミニスト」  確率的なBの場合「銀行の出納係り」かつ「フェミニスト」  なのでAの「銀行の出納係り」より確立は低いが、代表性に よる判断、つまり代表制ヒューリステイックにより、主観的 にはBが選ばれる。
(例2)
大腸内視鏡検査で8分間の検査のAさん、22分間検査のBさん。 辛い思いを長くしたのはBさんだが、Bさんの場合、最後の方で 辛さが和らぐと、主観的に辛い思いをしたのはAさんになる。
直感的思考は、比較的苦心もせず、余分な計算をすることもなく、 基本表象(basic representation)にそのまま従って動作する。 グループの基本表彰には、平均値は含まれているが、合計値は 含まれていない。

つまり以前の経済学は、意識や注意を無限で制約がないものとし、その他のものの最適化・効率化を検討していたが
経済心理学は、意識や注意も最適化・効率化が必要で、それらを含めた最適化を考えることを提唱していると思う。 

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