2011年1月30日日曜日

行動経済学(「不合理行動」とのつきあい方

最近きちんとした本をあまり読んでいない。関心の赴くまま読み始めるが、
読み終える前に他の本に関心が行っている。あまり目を使わないでできる
中国語の勉強は一応実施しているので、中国語はそれでも着実に上達した
感じはする。
組織行動を個人の意思決定、行動で説明する組織の行動のミクロ的基礎に
ついて少し体系的に考えて行こうと思っている。
これをベースに、情報、組織、経営というような一貫た理論を構築しそれを
コンサルテイングのテーマにできればとも思う。自分でも面白いと思い、
経営者に評価されるコンサルティングが全く行えない。これを脱却したいと
思う。
今日はその中で、行動経済学をベースにした個人の意思決定構造について
分かりやすく整理した本があったので、ポイントをメモとして残しておく。

1.個人の不合理的行動の原因
 ①認知的節約による不合理的行動
  A:過去にうまく行った行動を繰り返す。
    習慣化。
  B:周りの人たちの行動を模倣する。
    群集行動。さくらに30%に人は同調する。
  C:後悔しないように楽な選択をする。
    他人のアドバイスに従う。何もしない。
    選択肢が多いと、認知的負担が多くなり何も選ばなくなる。
    ⇒「決定回避」 
  D:問題を簡略化する。
    すべての要素に注目するのではなく、2,3の重要な要素だけに
    注目して選択肢を比較する。
    自分に都合のいい情報を受け取ろうとする「認知的不協和」
 ②本能的な評価による不合理的行動
  A:価値(評価)関数の性質①:緩やかなS字型
    参照基準点近くの差は強く認識され、参照基準点から離れたとこ
    ろでの差はあまり認識されない。
   「確実に2万円を失う」<「50%の確率で4万円を失う」
  B:価値(評価)関数の性質
    「損は得より心に響く:損出回避の感情」
    →現状維持バイアス
    →保有効果「一度手に入れたものを手放したくなくなる。」
    期待以上なら満足やうれしさを感じるが、期待以下なら不満や怒り、
    失望を感じる。
    そのためには、参照基準点を変えることが効果的。
    表現の仕方(フレーミング)を変える。
    同じことでも、「半数が助からない」→「半数が助かる」と表現を
    変えると判断が変わる。

 ③近視眼的本能による不合理行動
  A:時間の経過とともに好みが変わる。
   「目先の利益」を優先。「目先の費用負担」は避けたくなる。
  B:心の会計。
   前売り券を買って失くした場合、その当日券は買わない。
   同額の現金を失くした場合、その当日券は買う。
   ハウスマネー効果(あぶく銭効果)は使ってしまう。
  C:サンクコストの呪縛
   「今後の損得で判断しないで、今まで多額の費用をすでに支出して
    しまっていることに引っ張られる。」
    私見ではあるが、リアルオプション的思考では、今までの投資等
    による競合への優位性があれば、今後の合理性だけで損得を判断
    できないのではないかとも思われる。
  
 ④不確実性による不合理行動
  A:確率の把握は難しい。
  B:代表性ヒューリステックス(象徴する、代表する特徴だけ捉えて判断や
    識別を行う。
    想起しやすい(最近起きた)物事の確率を高く見積もる傾向
    ⇒「利用可能性ヒューリステックス」
   *「正しいプロスペクト理論」はS字型価値関数のことだけでなく、
     下記のステップを全て含めたものとのこと。
  Step1:問題を「編集」
          「重要でない要素を捨象したりして認知的な節約をする」
  Step2:編集された選択肢の評価。「価値関数」で評価し、過重された価値
      の総和で選択しの望ましさを評価。
      失敗は「偶然」、成功は「自分の実力」
      自分に都合のよい解釈=「解釈と記憶の自己奉仕バイアス」
 ⑤理性の限界による不合理行動
  A:機会費用の軽視
  B:時間的視野の狭さによる短略的行動
2. 利他的行動と協力行動
  人間は、個人的合理性だけでない「利他的行動」や「協力行動」をなぜ
  とるのか。具体的には、以下のように質問化できる。  
  Q1:見返りや制裁がなくても利他的行動や協力行動をなぜとるのか。
  Q2:自分の利益を犠牲にしてまで、他者に制裁をするのか。
  Q3:「そのように行動するもの」というときの行動はどのようなものか。
  Q4:思いやり、同情、正義感などの感情はなぜ生じるのか。
  Q5:見返りや制裁がない状況で利己的に行動する人とそうでないひとが
   分かれるのはなぜ?
  →「無意識」と「学習」が上記の回答のキーワードである。
    また以下のような性質を持つ。
   ①無意識に学習された行動の意味や役割に人は気づかない。 
   ②無意識の学習は利己的な目的に適うように行動を改善する。
   ③無意識に学習された行動は融通が効かない。

3.行動経済学の応用
  (1)自動選択の設定(デフォルト)
     人間は、自分で選択できないときには「何もしない」
     (認知的節約による不合理行動)を利用し、選択を誘導する。
  (2)スーパーチャージ
      参加率を上げるため行動をしてくれた人に褒章を与える。
      たとえば健康診断を受けさせるために、
       ①健康診断を受けた方から抽選で一定人数の人に賞金を出す。
        という広告を出す。
       ②全該当者(健康診断を受けていない人も含む)から抽選で
        一定数を選ぶが、健康診断を受けていない人が抽選に当
        たっても賞金は出さない。
        公表は、当事者だけでなく、健康診断を受けていたら当選
        していたはずの人も公表する。
  (3)バブルの仕組み
      ①人はランダムの株の動きにもトレンドを見つけてしまう。
      ②楽観的な投資家の期待は実現する。期待の自己実現。
      ③いずれ行き過ぎた熱狂になってしまう。
      ④まずは企業が将来の見通しの行き過ぎに気付く。
      ⑤機関投資家が企業行動の変化に気付きだして売り始める。
       値下がりが始まることを確信しだしたら、売りを積極化する。
      ⑥高い値で買った人ほど売ることができず、大きな損を抱えて
       しまう。

  (4)教育への応用
     勉強に熱中させるヒント。
      ①分かりやすく、明確な目標がある。
      ②主体的に行動できる。
      ③何度失敗しても、また挑戦できる。
      ④難しすぎず簡単すぎない。
      ⑤目的を達成するとほめられる。
      ⑥他人と比較することなく上達を実感できる。
      ⑦好奇心をくすぐる。
   (5)参照基準点の変化で感情をコントロールする。
      ①他の人と比べて劣っていても、以前の姿を参照基準点として
       意識させられれば意欲を引き出せる。
      ②ボーナスをカットしなければならないケースでも、同業他社
       等を引き合いにだし、より低い参照点を意識させれば受け入
       れてもらいやすくなる。
   (6)仕事の満足に関する4つの要因(優先度順)
      ①仕事の面白さ
      ②人間関係
      ③安心(失業の心配がない)
      ④将来性(昇進の可能性がある)      

以上ポイントを整理してきた。中身は深くはないが、全体を整理するには
よい。
今後、これらの視点を加味して組織行動を整理して行きたい思う。
「行動経済学による組織行動学(行動経済学によるミクロ的基礎付け)」